お部屋コーディネート施工例#526

長野県松本市 某旅館様施工例

~趣ある宴会場をプリーツスクリーンでスッキリと間仕切り~

松本市の高台で40年以上経営されている某旅館様、「創業当時から付いているアコーデオンドアをスッキリしたものに変えたい」とお問い合わせいただきました。

また、「舞台を物置代わりにしているため、目隠しも欲しい」とのご希望もいただきました。

現場での柄合わせや細かな仕様をしっかりと打ち合わせしながら、いくつかの難関にあたりながらも工事に臨ませていただきました。

施工前の様子~宴会場~

現場に伺うと、宴会場を間仕切りするための巨大なアコーデオンドアが目に入りました。



その開口巾はなんと約890cm!!広すぎて1枚の写真ではうまく収まりません(汗)

取り付けてあったアコーデオンドアは、立川ブラインドの「ハーモニドア」という大開口に対応した企業向け製品でした。



設置時期が古い上に最近はほとんど使用されていなかったこともあり、状態はかなり劣化が進んでおりました。

ランナーと生地を連結するボルト・ナットは緩んではずれ、生地も頑丈なため破れてはいないものの、40年の年季を感じさせるほど色褪せておりました。もはや通常通り可動出来ない状態です。

施工前の様子~舞台~

宴会場ということで舞台もございました。こちらも開口巾は約700cmあります。

こちらはテーブルやイスなどを片付けておく物置として使うため、目隠しになるものを取り付けてほしいとのことでした。

現状だと目隠しになるものはなく、丸見えの状態です。

打合せ~現状確認~

担当様からは予め「立川ブラインドのパネルスクリーンにしてみたい」とご要望をいただいておりました。



(参考画像)

生地をパネルのように複数枚仕立てて、このパネルをスライドさせて開閉することが出来る製品です。

非常にスタイリッシュかつ開閉操作も簡単なので、間仕切りにはぴったりな商品でした。

しかしここで問題が・・・

パネルスクリーンは最大製作巾が400cmまでしかできないのです。

これでは間口890cmには足りないことはおろか、3台並べて対応してもパネルの畳みしろが邪魔になってしまうため、諦めざるを得ませんでした。

第二の案は「ハーモニードア」を新しいものに交換する方法でした。しかしこちらも暗礁に乗り上げてしまいます。



ハーモニードアのレールは梁に埋め込まれてビス止めされていました。

通常ビスを外せばレールが外れるはずですが、これがどうしても外れないのです。「強力な接着剤で固定されているのでは?」と疑うほどでした。

また、少し力を入れて引っ張ろうとすると梁上部の壁から不穏な軋み音が聞こえました。

築年数が古く、その場にいた担当様も実際に触れて危機感を感じたため、交換する案もなしとなってしまいました。

打合せ~製品・柄決め~

そこで第三の案として出て決まったのがプリーツスクリーンでした。

プリーツスクリーンは生地を上方向へ畳み上げるため、アコーデオンドアのように畳んだ生地が横方向に溜まらず、開口巾を広く維持できます。

また最大製作巾は300cm(生地・仕様によって異なります)ですが、並べて取付しても生地と生地の間にできる隙間がごく少ないため、890cm開口巾の壁もクリアできます。

そして何より、プリーツスクリーンは障子の代用として開発された経緯を持つため、和風の宴会場に合う生地のバリエーションを豊富に取り揃えている点も決め手でした。

間仕切り用にお選びいただいた柄は立川ブラインドのプリーツスクリーン「ペルレ」より”ククリ”となります。





↑PS-6011(ダークブラウン)をお選びいただきました。

プリーツ畳みが生み出す直線的なラインは、お客様が求める「スッキリ感」につながり、日本伝統の織物技法「絣(かすり)」をイメージしたククリの表情はまさしく和の雰囲気そのもの。

美味しいとこどりのプリーツスクリーンで、間仕切りの生地はこちらで決定しました。

また、舞台の目隠しも統一性を出すためにプリーツスクリーンとなりました。

ただし生地は間仕切り用とは変えて、ニチベイの「もなみ」より”利休”をお選びいただきました。





↑M8062(アクネズ)をお選びいただきました。

水滴を高い位置から落として、和紙に柄やムラ感を生み出す技法「落水」によって風合いを出した生地となります。

こちらも江戸時代から続く伝統的な技法となり、これを和紙よりも耐久性の高いポリエステル生地に施すことで、現代的かつ和の趣の感じられる生地となっております。

お色もうっすらと紫がかったグレー系なので、品がありながら広々とした空間を演出してくれます。

取付

はじめに、ハーモニードアを処理します。

ハーモニードアの生地はレールごと外して処理するのですが、そもそもレールが外れないためどうしようもできません。



そこで元から外れかかっていたランナーのボルト・ナットを一つずつレンチで緩めて外すことにしました。

狭い隙間にレンチを入れて少しずつ外していく地道な作業・・・これがなかなか大変でした。

やっと外した生地も非常に重く(W450cm×H180cmの金属と頑丈なビニールの塊です)、宴会場から慎重に運び出して処分いたしました。

梁に残ったレール・ランナーは担当様ご了承のもとそのままにすることとなり、吊り下がったランナーは目立たないようレールの奥へと隠しました。

施工後の様子~間仕切り~

既存のハーモニドアが無くなり、ようやくプリーツスクリーンを取付しました!

890cmの大開口に対応するため、今回はプリーツスクリーンを5台に分割して間仕切りしました。

生地と生地の隙間は2~3mm程度しかなく、十分に間仕切りとしての機能を果たしています。築年数が古く梁から畳までの高さも不陸が激しかったため、少しずつ採寸しながら取付高さを揃えて取付してあります。



プリーツスクリーンは生地によって生地裏がのっぺりするものもありますが、今回お選びいただいた生地”ククリ”はほとんど表と差がなく、担当様からも安心したとおっしゃっていただけました。



全て畳み上げると非常にコンパクトに収まります。古い建築のため梁から床までの高さが180cmしかなかったので、畳みしろが縦の開口を狭めないよう、プリーツスクリーンは梁の側面に正面付けしてあります。



ここでワンポイントです。

プリーツスクリーンの操作はコードやチェーンを引っ張って生地を昇降させる物が多いですが、5台分割した間仕切り個所をこの方式にすると、最低でも3本のコードorチェーンが中間にぶら下がってしまい宜しくありません。

そこで今回間仕切り用プリーツスクリーンの操作方式は「コードレス式」をお進めさせていただきました。

昇降を行うコードなどがなく、代わりにボトムレールについているグリップを掴んで昇降を行います。



(参考画像)

本来床まで生地を下すような箇所にはオススメしない操作方式(屈伸運動が大変なため)なのですが・・・

①コードなどが垂れ下がらず見た目がスッキリすること

②ボトムレールを掴めば裏面からも操作できること(コード・チェーン式は裏面からの操作が非常に難しい)

上記2点を考慮して今回はコードレス式をオススメさせていただきました。

こちらも機能性と意匠性を両立出来たため、担当様に大変気に入っていただけました。

施工後の様子~舞台~

舞台の開口巾も約700cmなので、こちらもプリーツスクリーンを4台に分割して取付しました。

取付できる個所も細い木枠部分しかなかったため、きちんと水平が取れるよう計算をしながら取付位置を調整しています。



こちらの操作方式は「チェーン式」といたしました。

製品を取り付ける位置が高く(約230cm)、操作をするのは表面からのみのためです。



ちなみに発注の際に折り目がきちんと揃うように指示しているので、並べてつけても折り目が左右でズレないよう工夫しています。細かい点ですが、仕上りに差をつけることが出来る点だと思います。

お色も間仕切りプリーツスクリーンがダークブラウンだったので、同じ色にしていたら暗色に挟まれて圧迫感のある空間になっていたでしょう。担当様と奥様のセンス良い色柄選びの結果だと思います。

補足~コロナウイルス対策として~

今回取り付けたプリーツスクリーンは、昇降する高さを自由に調整することが出来ます。

コロナウイルス対策にあたり、換気・通風を良くしつつも間仕切りとして視線を遮ることが求められている中、プリーツスクリーンを床から上げた位置で止めておけばそれらを両立することが出来ます。



(生地を中間で止めた様子)

「コロナ以前」と違う新しい環境の中、宿泊施設は特に厳しい課題や条件を求められているとのことです。

今回取り付けさせていただいたプリーツスクリーンが、「新しい生活様式」にも対応できるものとなっていれば幸いです。

ゆうあいスタッフからのコメント

この度は打ち合わせから取付までご担当させていただき誠にありがとうございました。

難しい条件の中、全てが理想通りにはできませんでしたが、思いつく限りご提案をさせていただきました。

いまだ終わりの見えないコロナ禍の中ですが、温かみのある旅館の経営を続けられることを心から願っております。

まだ検討中の旅館内の間仕切りも、今回の施工を参考にしていただけると幸いです。